「小学校の思い出」  作者 ふちりん(小六)


「サイとゾウではどちらが好きかい。」
 と、四年生の時の友達の寺川達郎君にきいてみたら、
「う〜ん、ぼくはねえ、サイゾウ君がいいな。」
 と、予想もしなかった返事が帰ってきました。ぼくは、寺川君がサイゾウと言ったわけを深く考えてみたけれど、どうせ深いわけはなく、ただサイとゾウをくっつけただけなんだろうと思ってきいて見ました。
「ねえ、なんでさあ、サイゾウ君がいいなと言ったんだい。」
 すると、寺川君が自分のひみつをうちあけてくれました。
「うっするどい。実はね、劇やるでしょ。それで、ぼくはゴキブリの役になっただろう。
本当は、サイかゾウの役が良かったんだ。でもそんな動物は出せないから生徒の名前を一人サイゾウにしてくれと先生にたのんだけどムリだったのさ。だからね、サイとゾウのどちらかなんて選べないから、サイゾウ君がいいなといったのさ。」
 なにい、そんなに深い意味があったとは。すると、いきなり寺川君が逃るようにしてトイレに走って行ってしまいました。
 ついに四年の学習発表会の日になりました。寺川君はまだ悲しそうにスミの方でいじけていました。そこに、工藤君が現れて、
「いじけるなよ。サイゾウなんて名前みとめてくれるはずがないじゃないか。君はゴキブリ君。わかるかい?」
 と、なぐさめていました。
 いろいろ出し物があって、ぼくたちの劇「ボロボロボロタン」をやる時が来ました。ゴキブリ役は、ぼくと、工藤君と寺川君に勝田君です。寺川君もあそこまで落ち込んでいたわりには生き生きとした演技を演じていました。
 思い出は他にもたくさんあるけれど、四年の劇を選んだのは寺川君の言葉が、深く心にきざみつけられたからです。


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