過去の名文

2004年
6月21日
仕様の無いほど好きなのです。ただ、好きなのです。
それで、いいではありませんか。純粋な愛情とは、そんなものです。
太宰治『ろまん燈籠』より

6月23日
人間の言葉はみんな工夫です。気取ったものです。
太宰治『お伽草紙』

6月24日
ああ、誰かはっきり、僕を規定してくれまいか。
馬鹿か利巧か、嘘つきか。天使か、悪魔か、俗物か。
殉教者たらんか、学者たらんか、または大芸術家たらんか。自殺か。
太宰治『正義と微笑』

6月25日
美しさは、人から指定されて感じいるものではなくて、
自分で、自分ひとりで、ふっと発見するものです。
太宰治『「晩年」について』

6月26日
なに、ばかだよ。いいとしをして雀の子のあとを追い廻すなんて、呆れたばかだよ。
太宰治『お伽草紙』

6月27日
ヤケ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、
もどっかしさ、いまいましさで飲む酒の事である。
いつでも、自分の思っていることをハッキリ主張できるひとは、ヤケ酒なんか飲まない。
(女に酒飲みの少いのは、この理由からである)
太宰治『桜桃』

6月29日
お前たちには、ひとの悪いところばかりが眼について、
自分自身のおそろしさにまるで気がついていないのだからな。
おれは、ひとがこわい。
太宰治『お伽草子』

6月30日
眼鏡をとって人を見るのも好き。
相手の顔が、皆、優しく、きれいに、笑って見える。
太宰治『女性徒』

7月1日
これが本当の生きかただ。
虚飾も世辞もなく、そうしてひとり誇りを高くして生きている。
こんな生きかたが、いいなあと思いました。
太宰治『水仙』

7月2日
「兄さんが死んだので、私たちは幸福になりました」
太宰治『日の出前』

7月4日
子夏が曰わく、小人の過つや、必ず文(かざ)る。
[子夏が言った。くだらない人間は、過ちを犯すと、
必ずそれを言いつくろってごまかそうとする]
『論語』子張篇

7月6日
「やめる。あしたから、一滴も飲まない」
「ほんとう?」
「きっと、やめる。やめたら、ヨシちゃん、僕のお嫁になってくれるかい?」
太宰治『人間失格』

7月7日 七夕
お酒くらいでは、とても駄目だったんです。
いつも、くらくら目まいをしていなければならなかったんです。

そのためには、麻薬以外になかったのです。
太宰治『斜陽』

7月8日
幼くして出郷する時、母上から受けた教訓は立派に実行して来ました。
酒と女でしたね。今迄酒は少しやりましたが女は全然知りませんでした。
今となっては何も思ひ残す事はありません。只日本の必勝のみであります。
宮内 栄
沖縄近海にて戦死 23歳
『英霊の言乃葉』

7月10日
君は、今まで何も失敗してやしないじゃないか。
駄目だかどうだか、自分で実際やってみて転倒して傷ついて、
それからでなければ言えない言葉だ。
何もしないさきから、僕は駄目だときめてしまうのは、それあ怠惰だ。
太宰治『みみずく通信』

7月11日
自分は、人間を極度に恐れていながら、それでいて、
人間を、どうしても思い切れなかったらしいのです。
太宰治『人間失格』

7月12日
アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。
人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。
太宰治『右大臣実朝』

7月17日
自己弁解は、敗北の前兆である。いや、すでに敗北の姿である。
太宰治『かすかな声』

7月19日
すごい美人。
醜くてすごい女なら、電車の停留場の一区画を歩く度毎に、三十人くらいは発見できるが、
すごいほど美しい、という女は、伝説以外に存在しているものかどうか、疑わしい。
太宰治『グッド・バイ』

7月26日
この道は、どこへつづいているのか。
それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。
「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当るようです。」
太宰治『パンドラの匣』

8月1日
ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。
愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
太宰治『走れメロス』

8月8日
でも、ポオズの奥にも、いのちは在る。冷い気取りは、最高の愛情だ。
太宰治『火の鳥』

8月15日
ひとに「愛される資格」が無くっても、
ひとを「愛する資格」は、永遠に残されている筈であります。
ひとの真の謙虚とは、その、愛するよろこびを知ることだと思います。
太宰治『ろまん燈籠』

8月22日
僕には、花一輪をさえ、ほどよく愛することができません。
ほのかな匂いを愛ずるだけでは、とても、がまんができません。
太宰治『秋風記』

8月29日
「お父ちゃん。お祈りをすると、神様が、何でも下さるって、ほんとう?」
太宰治『人間失格』

9月13日
男の子って、どんな親しい間柄でも、久し振りで逢った時には、
あんな具合に互いに高邁の事を述べ合って、
自分の進歩を相手にみとめさせたい焦躁にかられるものなのかも知れないね。
太宰治『パンドラの匣』

9月20日
花は、しぼまぬうちこそ、花である。美しい間に、切らなければならぬ。
太宰治『駈込み訴え』

9月26日
私には思想なんてものはありませんよ。すき、きらいだけですよ。
太宰治『苦悩の年鑑』

10月10日
おれは、この女を愛している。どうしていいか、わからないほど愛している。
そいつが、おれの苦悩のはじまりなんだ。けれども、もう、いい。
おれは、愛しながら遠ざかり得る、何かしら強さを得た。
生きて行くためには、愛をさえ犠牲にしなければならぬ。
なんだ、あたりまえのことじゃないか。世間の人は、みんなそうして生きている。
あたりまえに生きるのだ。生きてゆくには、それよりほかに仕方がない。
おれは、天才でない。気ちがいじゃない。
太宰治『姥捨』

10月20日
死んで行くひとは美しい。生きるということ。生き残るということ。
それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしいことのような気もする。
太宰治『斜陽』

10月26日
たちまち過去の恥と罪の記憶が、ありありと眼前に展開せられ、
わあっと叫びたいほどの恐怖で、坐っておられなくなるのです。
太宰治『人間失格』

11月1日
むずかしい理屈はくそにもならぬ。
太宰治『道化の華』

11月7日
私は、あなたに、いっそ思われていないほうが、
あなたにきらわれ、憎まれていたほうが、
かえって気持がさっぱりしてたすかるのです。
太宰治『おさん』

12月1日
女は、うぶ。この他には何も要らない。
太宰治『花吹雪』

12月13日
私は、女には好かれたく無いと思っている。
あながち、やけくそからでも無いのである。ぶんを知っているのである。
太宰治『俗天使』

12月19日
おまえは、いま、人間の屑、ということになっているのだぞ。知らないのか。
太宰治『鴎』

2005年
1月3日
和を以て貴しと為す、というお言葉もあるが、
和というのは、ただ仲よく遊ぶという意味のものでは無い。
互いに励まし合って勉強する事、之を和と謂う。
太宰治『惜別』

2月3日
これからどんどん成長しても、少年たちよ、容貌には必ず無関心に、
煙草を吸わず、お酒もおまつり以外には飲まず、
そうして、内気でちょっとおしゃれな娘さんに気永に惚れなさい。
太宰治『美男子と煙草』

2月17日
私の胸の虹は、炎の橋です。胸が焼きこげるほどの思いなのです。
麻薬中毒者が、麻薬が切れて薬を求める時の気持ちだって、これほどつらくはないでしょう。
太宰治『斜陽』

3月17日
片恋なんです。でも私は、その女のひとを好きで好きで仕方が無いんです。
太宰治『トカトントン』

5月19日
理想だの哲学だの苦悩だのと、わけのわからんような事を言って、
ずいぶん空の高いところを眺めているような恰好をしていますが、
なに、実は女の思惑ばかりを気にしているのです。
ほめられたい、好かれたいばかりの身振りです。
太宰治『新ハムレット』

5月31日
なるべくなら僕は、清潔な、強い、明るい、なんてそんな形容詞を使いたくないんだ。
自分のからだに傷をつけて、そこから噴き出た言葉だけで言いたい。
下手くそでもいい、自分の血肉を削った言葉だけを、どもりながら言いたい。
太宰治『乞食学生』

7月4日
人間は現実よりも、その現実にからまる空想のために悩まされているものだ。
空想は限りなくひろがるけれども、しかし、現実は案外たやすく処理できる小さい問題に過ぎないのだ。
太宰治『春の枯葉』

8月2日
沈黙はいけません。あれには負けます。あれは僕らの最大の敵ですね。
こんなおしゃべりをするという事は、これは非常な自己犠牲で、ほとんど人間の、最高の奉仕の一つでしょう。
しかも少しも報酬をあてにしていない奉仕でしょう。
太宰治『渡り鳥』

10月8日
性欲の、本質的な意味が何もわからず、
ただ具体的な事だけを知っているとは、恥ずかしい。犬みたいだ。
太宰治『正義と微笑』

2006年
4月9日
人間の生活の苦しみは、愛の表現の困難に尽きるといってよいと思う。
この表現のつたなさが、人間の不幸の源泉なのではあるまいか。
太宰治『惜別』

2007年
2月27日
弱者の友なんだ。芸術家にとって、これが出発で、また最高の目的なんだ。
こんな単純なこと、僕は忘れていた。僕だけじゃない。みんなが、忘れているんだ。
僕は、ポチを東京へ連れて行こうと思うよ。友達がもしポチの恰好を笑ったら、ぶん殴ってやる。
太宰治『畜犬談』

4月1日
おれは、ことし三十になる。孔子は、三十にして立つ、と言ったが、おれは、立つどころでは無い。
倒れそうになった。生き甲斐を、身にしみて感じることがなくなった。
強いて言えば、おれは、めしを食うとき以外は、生きていないのである。
太宰治『兄たち』

5月1日
人間は一生、人間の愛憎の中で苦しまなければならぬものです。のがれ出ることは出来ません。
忍んで、努力を積むだけです。学問も結構ですが、やたらに脱俗を衒うのは卑怯です。
もっと、むきになって、この俗世間を愛惜し、愁殺し、一生そこに没頭してみて下さい。
神は、そのような人間の姿を一ばん愛しています。
太宰治『竹青』

6月8日
苦しみが苦しみを生み、悲しみが悲しみを生み、溜息が溜息をふやす。自殺。のがれる法は、それだけだ。
太宰治『新ハムレット』

7月26日
自分には、あざむき合っていながら、清く明るく朗らかに生きている、
あるいは生き得る自信を持っているみたいな人間が難解なのです。
太宰治『人間失格』

9月12日
明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。
けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。
太宰治『女生徒』

10月4日
嘘をつかない生活は、決してたおれることは無いと、私は、まず、それを信じなければ、いけない。
太宰治『懶惰(らんだ)の歌留多』

2008年
2月2日
ナポレオンの欲していたものは、全世界ではなかった。タンポポ一輪の信頼を欲していただけであった。
太宰治『HUMAN LOST』

4月26日
くるしい時に、くるしいと言ってはいけないのですか? なぜですか?
僕は、いつでも、思っていることをそのまま言っているだけです。
素直に言っているのです。本当に、淋しいから、淋しいと言うのです。
太宰治『新ハムレット』

8月2日
誰にも目撃せられていない人生の片隅に於いて行われている事実にこそ、高貴な至宝が光っている場合が多いのです。
それを天賦の不思議な触覚で捜し出すのが文芸です。
太宰治『惜別』

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